コロナの影響による生活様態の変化に伴い、アパレル産業における対面販売の割合が減少傾向にあるなか、ファッションECサイトなどのオンラインでの販売が増加してきています(※矢野経済研究所)。
そのような状況の中、ECサイトの開設を検討している企業のご担当者様や個人事業主の方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ですが、一概にECサイトといっても様々な種類が存在し、それぞれにどのような特徴やメリット・デメリット、開設にどの程度の費用がかかるのかなかなか分かりづらいかと思います。
本記事では、ファッション系ECサイトの開設を検討されている方に向けて、開設手順や費用、運営方法やメリット・デメリット等を初心者でもわかりやすく解説しています。
この記事でわかること
- ファンション系ECサイトの開設手順・開設費用・運営方法
- ファッション系ECサイトを開設するメリット・デメリット
ECサイト開設方法の種類
主なECサイトの開設方法と特徴は以下のとおりです。
- モール型
開設ハードルは低く集客が比較的容易だが、拡張性や施策の自由度は低く、自社のブランディングも難しい
(サービス例:楽天、Amazon) - ASP型
手軽かつ低コストでサイト製作が可能だが、カスタマイズ性・拡張性が劣る
(サービス例:BASE、Makeshop) - オープンソース型
一般公開されているソフトを活用し自社開発もしくは外注開発を行うため、ASPより初期費用が高額となる
(サービス例:EC-CUBE) - パッケージ型
初期費用・維持費用がASPやオープンソースより高額だが、大規模ECサイト運営も可能
(サービス例:ecbeing、コマース21) - クラウドEC型
費用・開発期間はパッケージ型と同程度だが、データやシステムがクラウド上にあるためサーバーを準備する必要が無く、システムの最新性も保つことができる
(サービス例:メルカート、shopify) - フルスクラッチ
ゼロからサイトを制作するため膨大な費用・期間が必要となるが、最も柔軟にサイト製作を行うことができる
(フルスクラッチECサイト例:ユニクロ、ZOZOTOWN)
開設方法を選定する場合は、ECを開設する目的や開設の予算、売上規模等に応じて検討が必要となります。
各製作方法の特徴に関しては以下の記事でご紹介しておりますので、合わせてご参考ください。
◆記事:ECサイトとは?開設前に知っておきたい基本機能や運営方法をわかりやすく解説します!
開設に必要な工程
以下では、製作方法毎に必要となる工程概要を記載しています。
モール型
- モールへの出店申し込み
モールの運営事業者に出店の申し込みを行う。 - 開業準備
サイトデザインや配送・支払いに関する設定、商品画像や価格・説明文などの商品登録などを行う。 - モールによる出店審査
運営事業者毎に審査基準などが異なるため、各事業者に合わせ対応を行う。 - サイト開設
ASP型
- ASP登録/ドメイン取得
ASPサービスに登録した上で、ドメインを取得してサイトURLを決める。 - ショップ作成
テンプレートをベースにサイトデザインを作成する。 - 開業準備
配送設定や支払いに関する設定、商品画像や価格・説明文などの商品登録などを行う。 - サイト開設
オープンソース型・パッケージ型・クラウドEC型・フルスクラッチ型
- 要件定義
どのようなサイト・システムを作成するか検討する。
自社開発が難しい場合は、外注先や外注を依頼する範囲についても検討を行う。 - システム設計書作成
要件に基づきサイトの設計書を作成する。詳細工程や運営時の業務フローに関しても検討を行う。 - システム開発・テスト
設計書に基づき開発を行う。工程遅れや不良を未然に防ぐために、定期的に進捗を管理する。 - 開業準備
配送設定や支払いに関する設定、商品画像や価格・説明文などの商品登録などを行う。 - サイト開設
ファッション系のECサイト運営に必要な業務
サイトの保守
不具合があった際のメンテナンスやブランドコンセプトに合わせたデザイン改修、UI/UXの改善といったサイトのメンテナンスを行います。
メンテナンスのためにはHTMLやCSS、Javascriptといったプログラミング言語の理解が必要となることもあるため、メンテナンスの要件を自社で策定した後に、実際の改修作業は外注にて対応している場合もあります。
仕入れ・商品の登録作業
在庫状況に応じた商品の仕入れや、仕入れた商品のサイトへの登録作業を行います。登録作業では、掲載する商品の撮影、写真の修正・加工といった対応が必要となります。
商品の画像や説明文は売上に直結する重要な要素となります。
受注・発送作業
購入されたお客様への受注確認メールの送信や、商品の発送作業・発送連絡を行います。また、売上の管理・分析も行います。
デジタルマーケティング施策
ECサイトや商品を検索で上位表示させるためのSEO対策やリスティング・デイスプレイ広告の出稿、ファンを獲得してECサイトへの導線を構築するためのSNSマーケティング等を行います。
プロモーション活動
SNSやブログ、メールマガジン等を活用し、新作入荷の情報やセール情報を展開して売上拡大を図ります。
ファッション系のECサイトを開設するメリット・デメリット
◆メリット
様々なエリアの顧客にアクセスできる
店舗の場合は実際に足を運んでいただくことが必要となるため、商圏が近隣のお客様に限りますが、ECサイトの場合は日本全国に販売を行うことができます。
また、海外向けのECサイトを整備した場合は、日本だけでなく世界中へ商圏を拡大することが可能です。
時間に縛られることなく営業ができる
店舗の場合は営業時間が限られていますが、ECサイトであれば24時間365日営業することができます。
お客様は店舗にアクセスすることなく、自分の好きな時間に商品の検討・購入が可能となるため、自社・お客様双方にとってメリットがあります。
デジタル情報の取得・活用ができる
購入時や閲覧時に顧客の情報を無理なく取得することができます。
取得した情報の分析結果をもとに、プロモーション提案や効果的なキャンペーン情報を送るといったことも可能となるため、実店舗よりも効果的な販売活動を行うこともできます。
少額かつ短期間ではじめることができる
ECサイトの開設方法によっては、少額かつ短期間でサイトを解説し販売をスタートさせることができます。
店舗の場合は出店場所の検討から物件契約、内装改修など、ある程度の費用・期間が必要となるため、少額で新店舗を開設したい方にとってはメリットとなります。
◆デメリット
サイト維持費用が発生する
作成方法によってはサイトを運営するための費用が発生します。
また、自社にエンジニアがいない場合はサイト改修や保守を行う際に外注する必要があるため、定期的に外注費用が発生する可能性も高いです。
知名度が低い場合は、集客が難しい
EC市場には、オンライン上で自社を選んでもらうための様々な施策を展開している競合がひしめき合っています。
そのため、自社の知名度があまり高くない場合は、SEO対策やWeb広告といったデジタルマーケティング施策が重要となってきます。
上述の集客対策を行う場合は、追加で費用が発生する可能性もあるため、あらかじめ考慮しておくとよいでしょう。
サイズ感・素材感を伝えづらいため、返品のリスクが高い
実際に店舗で購入を検討する際は試着ができますが、オンライン上では画像や寸法のみの提示にとどまってしまいます。
そのため、サイズ感や素材感といった購入決定に重要な要素の把握が難しいため、実際に届いた際に「思っていた感じとちがう」といったことが生じやすく、結果的に返品のリスクが高くなります。
対面での接客ができないため、商品以外の付加価値提供が難しい
店舗販売では、店員が第三者としての意見をお伝えしたり手持ちの服に合わせたトータルコーディネートを提案したりすることで、商品以外の新たな付加価値を提供することができますが、ECの場合は単なる商品の提供のみにとどまってしまいます。
開設にかかる費用はどのくらい?
開設方法やプラットフォームで費用は大きく変動します。
以下は、開設方法毎の費用相場目安です。
No. | 開設方法 | 初期費用 | 継続費用 |
1 | モール型 | 0円〜 | 0円〜 |
2 | ASP型 | 0~10万円 | 0~10万円 |
3 | オープンソース型 | 0円〜 | 10万円〜 |
4 | パッケージ型 | 500万円〜 | 10万円〜 |
5 | クラウドEC型 | 500万円〜 | 10万円〜 |
6 | フルスクラッチ | 1,000万円〜 | 30万円〜 |
継続費用の中にはシステム利用料やサイト保守費用、販売手数料などが入ります。
販売手数料は、利用するプラットフォームによって変わります。実際に検討する際は売上の想定規模をもとに試算をしてみることで、発生する見込みの手数料を試算しておくとよいでしょう。
まとめ
本記事では、ファッション系ECサイトの開設手順や費用、運営方法やメリット・デメリットに関して解説してきました。
自社の売上規模やECサイトを開設する目的、予算などによって、適切な開設方法は変わってきます。
まずは自社の状況を整理した上で、各開設方法の特徴やファッションECサイトを開設するメリット・デメリットを加味し、適切な開設方法の検討を進められてはいかがでしょう。