ECサイトでの商品やサービスの売上は急成長を遂げており、利用者も増えていることから、企業の新たな事業として取り組み始めたところも多いのではないでしょうか。
「自社の新規事業で、ショッピングサイトを立ち上げお客様に販売したい!」
「自社ECサイトの新規構築の担当者として任命された。」
しかし、サイト開設に詳しくない方は、様々な不安を抱えているかと思います。
「ECサイトの開設は、何から始めれば良い?」
「ECサイトの構築には何が必要?」
「自社サイト型にするべき?モール型にするべき?」
このような不安を解消できるよう、本記事ではECサイトの構築、開設前に知っておくべきこと、基本機能や運営方法について解説していきます。
この記事でわかること
- ECサイトとは何か、ECサイトの基本機能
- 自社にピッタリのECサイトの種類や運営方法
ECサイトとは
ECサイトとは、Eコマースサービス提供ウェブサイトのことです。
Eコマースとは電子商取引のことで、インターネットなどのネットワークを活用し、電子的な契約や決済などの商取引をすることです。
コロナ禍の巣ごもり需要を追い風に利用が定着してきています。
ECには以下の形態があります。
- BtoB(Business to Business)企業間取引
- BtoC(Business to Consumer) 企業・消費者間の取引
- CtoC(Consumer to Consumer) 消費者同士の取引
- DtoC(Direct to Consumer)企業が中間業者を介さず消費者に直接販売
ECサイトの市場規模
野村総合研究所による推計では、BtoCでの国内におけるEC市場は約20兆円でした。(2020年)
今後も順調な伸びを見せ、2026年には29.4兆円にのぼると推定されます。
物販系のオンラインへのシフトは加速し、その結果業績を大きく伸ばしています。一方で、サービス・コンテンツ系の需要は縮小すると見られています。
近年はスマートフォンからECサイトにアクセスし、買い物をする消費者が増加しています。モバイル端末にも対応したサイトの構築や決済手法が求められています。
参考:ITナビゲーター2021年版、野村総合研究所
参考:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました、経済産業省
ECサイトの種類
ECサイトは大きく2種類に分類できます。
一つは、楽天市場やAmazonのマーケットプレイスといった「モール型」、もう一つは、モールには出店せず自分たちでサイトを開設・運営する「自社サイト型」です。
どちらを選ぶべきか悩むと思いますが、それぞれの特徴や違いを理解し、メリット・デメリットを考慮しながら、運営したいショップの目指している方向性を見極めて検討してください。
モール型と自社サイト型のメリットとデメリットをそれぞれまとめました。
種類 | メリット | デメリット |
モール型 | ・集客力・信頼度の高さ・初心者でも簡単手軽にできる | ・出店料、手数料・価格競争・ブランディングが難しい・顧客情報が取れない |
自社サイト型 | ・利益率の高さ・ブランディングが可能・リピート率が高い | ・自力での集客が難しい・成果を出すまで時間を費やす・運営に主体性が必要 |
モール型
モール型は、複数のショップが集まり大きなショップを形成するECサイトです。
代表的なものに、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどがあります。
モール型は出店者からの出店料や売上手数料を収益源としています。
主なモールの概略は以下の通りです。
モール名 | 部門売上高※1 | 出店数 | サイト視聴者数※3(2021/4) |
Amazon | 2兆2,364億円(日本) | 178,000(2015/6) | 5,120万人 |
楽天市場 | 8,201億円 | 51,815(2020/10) | 5,370万人 |
Yahoo!ショッピング | 8,402億円※2 | 872,289(2019/3) | 2,557万人 |
※1.売上高は2021年11月時点での各社の直近決算期末の公表数値
※2. Zホールディングス(Yahoo!ショッピング、PayPayモールなど)
※3. 参考 ニールセンニュースリリース2021/6/15
自社サイト型
自社サイト型は、独自ドメインを取得しショップを運営するECサイトのことです。
構築方法にはいくつか種類があり、本記事の後の項目の「ECサイトの構築方法」で紹介します。それぞれにメリットやデメリットがあるので、自社の規模や運営体制を考えて検討しましょう。
自社で構築したサイトで商品を販売するモデルのDtoCが注目を集めています。細かな顧客情報によって顧客との関係を深めることができるためです。
「Shopify」や「BASE」などの中小企業や個人でも簡単にECサイトを構築できる支援サービスが増えてきていることも普及の要因です。
ECサイトの構築方法
ECサイトの構築方法を種類別にご紹介します。
それぞれの構築方法の初期・月額費用とメリット・デメリットを表にまとめました。構築方法の詳細については後ほど説明します。
構築方法 | 初期費用 | 月額費用 | メリット | デメリット |
ASP | 0〜10万円 | 0〜10万円 | コストを抑えやすい立ち上げのハードルが低く出店しやすい | カスタマイズ性が低い |
パッケージ | 500万円〜 | 10万円〜 | サポートが充実カスタマイズ性が高い | コストが比較的高い |
フルスクラッチ | 1000万円〜 | 30万円〜 | カスタマイズ性が非常に高い | コストと時間が非常にかかる |
オープンソース | 0円 | 10万円〜 | コストを抑えやすい誰でも開発可能カスタマイズ性が高い | 構築に高度な知識が必要セキュリティが脆弱になりやすい |
ASP(アプリケーションサービスプロバイダ)
ASPとは、ローカルマシンにソフトウェアをインストールするのではなく、インターネットを介してウェブブラウザーなどで利用できるサービスのことです。
立ち上げのハードルが低く手軽にECサイトを構築できます。コストも抑えるられ構築に必要な期間も短く済む点が特徴的です。
ASPは基本的にカスタマイズができないものが多いとされてきましたが、近年はカスタマイズ可能なASPも登場してきています。
パッケージ
ECサイト構築のベースとなるソフトウェアをパッケージの販売会社から購入する手法です。既存のパッケージを元にしてECサイトを構築するので、あまりコストをかけずに作成可能です。
必要となるカート機能、受発注管理、顧客管理などがあらかじめ含まれているため、これを基本に独自のサイトが構築できます。
フルスクラッチ
フルスクラッチとは、ゼロからECサイトを設計する手法です。
既存のシステムやソフトウェアを使用しないために、時間とコストはかかってしまいますが、デザイン・設計は制限なく構築できるので、自社の要件に合わせることが可能です。
オープンソース
オープンソースとは、プログラムの内容であるソースコードを無料で公開し、機能を増やしたり不具合を修正するなど自由に改良できるものです。
自由に構築できますが、バグへの対処やセキュリティ対策などは全て自社で行うため、技術力や専門知識が必要となります。比較的安価に構築できます。
運営に必要な業務一覧
次に、ECサイトの運営で必要な業務を説明します。
運営は大きく売上を作る機能であるフロントと、運営のサポート業務を行うバックオフィスに分けられます。
さらに細分化するとECサイトの運営に必要な業務は9つに分けられます。
フロント機能(売上を作る機能、マーケティング)
- 販売・商品企画
- サイトの企画、構築、更新
- 商品仕入れ
- プロモーション
バックオフィス機能(運営のサポート機能、フルフィルメント)
- 商品情報登録、ささげ
- 受発注管理
- 在庫管理
- 物流
- アフターサービス
それぞれの業務について詳しく見ていきましょう。
フロント機能
販売・商品企画
ECサイトを運営するにあたり利益を上げるためには、まずは売れる商品の企画をしなくてはなりません。
「ユーザーに受け入れられるか?」
「トレンドは?季節に合っている?」
などの点を考慮し企画の検討をしましょう。
商品の原価率・利益率などの計算を行い、具体的なビジネスプランを立てていきます。
ECサイトの企画や構築・更新管理
ECサイトの構築にあたりシステムやプラットフォームの検討をします。本記事の前項で紹介した「ECサイトの種類」を参考にしてください。
次にデザインを決定します。あまりデザインに凝りすぎずシンプルで使いやすいサイトを作成しましょう。複雑や見た目が派手だと、サイトがつながらず使いづらくなり売上が下がる原因にもなります。
商品の仕入れ
販売計画に沿って商品を仕入れます。受注や入荷数などの情報をもとにして、適正在庫が保てるように仕入れのコントロールをする必要があります。過剰在庫を抱えコストの負担を増やすことがないように注意しなくてはなりません。
もしもの場合に備え、仕入れ先を複数確保しておく、迅速な発注ができるなどなどの対策も考えておきましょう。
プロモーション、集客・販売促進
ECサイトへの集客を強化し、売上を最大化するためにプロモーションは欠かせません。
さまざまな広告媒体があるので、予算や目的に応じて選定しましょう。
広告には以下のような種類があります。
- リスティング広告
- SEO、ブログ施策
- アフィリエイトプログラム
- ディスプレイ広告、リマーケティング広告
- SNSマーケティング
リスティング広告はユーザー特性や行動に合わせて広告を表示する方法で、即効性があります。ただしコストは嵩んでしまいます。
近年は特にInstagramやTwitterなどのSNSの媒体ごとに合わせたSNSマーケティングに注目が集まっており、情報発信できるスキルも重要視されています。
バックオフィス機能
商品情報登録・ささげ
商品情報の登録をします。商品名、価格、JANコード、商品スペックなどの商品マスタを作成します。
また、「ささげ」を行います。ささげとは商品の撮影、採寸、原稿の執筆の掲載する商品情報を準備する業務の頭文字をとったEC分野の用語です。
受発注管理
受発注管理はバックオフィス業務の中心となる業務でとても重要です。
ECサイトの受注内容を確認して、在庫を引き当てて出荷指示をします。
顧客に納期や発送状況などを知らせるメール送信や請求書や送付状の準備もし、決済処理も担います。
在庫管理
仕入商品が物流の倉庫に届くことを入庫といい、入庫した商品の数量や品質などを確認して、決まった場所で保管します。
倉庫内にある実際の在庫とECサイトに登録されている在庫数がいつも同じとなるように管理します。
出荷・配送・物流
出荷指示に基づいて、倉庫から商品を取り出し、以下の作業を行います。
- ピッキング
- 梱包
- 配送
- 追跡番号の取り込み
- 出荷メールの送信
商品の出荷の際には配送業者の選定も重要となります。
コスト面や、扱う商品のサイズに適した配送方法が使える業者を選びましょう。
売上規模が小さい段階であれば、自社で物流全般をやってみると現場について理解できます。
アフターサービス・カスタマーサポート
リピーターの獲得につなげる重要な業務です。
メール・電話・チャットなどあらゆるチャンネルを介してお客様の疑問や要望に迅速に的確に答える必要があります。
ブランドの信頼や自社の評判に大きく響いてしまうため、どのような問い合わせに対しても誠実な対応が求められます。
まとめ
本記事では、ECサイトとは何かについて説明し、ECサイトの市場規模から種類、構築方法をご紹介しました。
手軽にECサイト構築ができるようになりましたが、その分選択肢が増えどれにしたら良いのか迷ってしまうかもしれません。
この記事を参考に、自社のサイトの内容をしっかり把握した上でふさわしい手法を選んでください。