健康食品と言うと、年齢層の高い方が健康面を気にしたり、いつまでも若々しくいたいと考えて購入する場合が多いイメージが強く持たれています。
これまでの年齢層の高い人にとっての主な情報源は、テレビ広告やテレアポなどのいわゆるオフラインマーケティングでした。
健康食品の売上は成長を続け、ECサイトでの販売も多くを占めるようになってきました。
健康食品をECで扱うにはどのような点を意識すればよいのか?と疑問に思う方もいると思います。
本記事では健康食品ECの成功事例と、それらのECの共通点を解説します。
この記事でわかること
- 売れている健康食品ECサイトの成功事例がわかる
- 売れている健康食品ECの共通点がわかる
健康食品ECの市場規模は?
まず健康食品ECの市場の規模について解説します。
日本流通産業新聞が調査した健康食品の通販売上高の2021年実績は、以下の通りの順位です。(単位:百万円)
1位:サントリーウエルネス:98,500
2位:ディーエイチシー:50,224
3位:世田谷自然食品:26,000
4位:ユーグレナ:21,600
5位:ファンケル:20,981
出典:日本流通産業新聞「健康食品の通販売上高調査」より
また、博報堂の調査:「EC生活者調査」よりEC経由での購入者の実態が調査されました。
年齢層や性別によって、ECで購入する金額をジャンル別に調査したものです。
表1:各ジャンルのEC経由平均年間購入金額
出典:博報堂DYグループ「EC生活者調査」より
EC経由での平均年間購入金額が高いジャンルで、「健康食品・飲料」は、「アルコール」、「化粧品」に次いで3番目の金額です。
年代別では、男性60代が全体と比べてかなり購入金額が高くなっていて、女性60代・50代が次いで高くなっています。一方で女性20代・30代は購入金額はかなり少なくなっています。
EC経由での商品の購入がどの程度行われているかの指標である「EC購買シェア率(※)」では健康食品・飲料がおよそ7割を占めており、購入チャネルがECにシフトしていることが浮き彫りとなりました。
(※)EC購買シェア率=EC経由の年間購入額÷全ルート[オフライン・EC]の年間購入額
表2:各ジャンルのEC購買シェア率
健康食品ECの成功事例4選
健康食品のECサイトでの販売に成功し、売上を伸ばした事例を4つ紹介いたします。
サントリーウエルネス
https://www.suntory-kenko.com/
サントリーウエルネスは、ビールや清涼飲料水で有名な大手飲料メーカーのサントリーの健康関連事業であり、主力商品の「セサミン」は幅広い年齢層の支持を集めています。
健康食品の年間売り上げは2021年は1位を達成しました。
体調や美容を心配する人や、不規則な生活を改善したい、若々しさを保っていたいなどの幅広い層からの要望に答えられるようにしています。
既存顧客や新規顧客へのアプローチを積極的に行い、顧客とのコミュニケーションを大切にしているということです。
定期購入コースには、お得用の90日分、通常用の30日分と分かれていて、年間だとどれくらい購入費用を抑えられるかが記載されています。このことで購入のハードルを下げるための効果的な戦略を展開しています。
やずや
やずやは、健康補助食品の通信販売を手がけています。
単品通販においての、リピート通販の先駆けとして、売上を大きく伸ばしてきました。
即効性のあるものよりも、日常的に愛用してもらえるよう定期購入を狙いとしています。
これまでの顧客層は70代以上が多かったとのことですが、最近ではターゲットを40代から60代の世代にも向けているため、オンラインでのEC販売にも力を入れています。
注力した結果、オンライン広告からECサイトへの流れが増加傾向です。
健康食品の業界は、怪しげな印象を持たれてしまう場合もありますが、サイトには経営理念を掲げ、薬事法や薬機法などのルールを遵守したサイト運営や広告の作成を心がけているということです。
ファンケル
https://www.fancl.co.jp/index.html
ファンケルは、化粧品の販売を主力としていましたが、最近では健康食品の売上も大半を占めるようになりました。
特徴は無添加の製品にこだわり、魅了された既存顧客のリピート率が高い点です。
年間での健康食品の売上も2021年は5位となっています。
定期購入サービスで、初回割引や送料無料などのキャンペーンも豊富です。
女性向けの化粧品や健康食品を多く扱っているため、ホームページやECサイトは白を基調とした清潔感や安心感があり、企業のイメージへとそのままつながっています。
また、顧客の口コミを掲載しています。特に女性ユーザーは口コミをチェックし重視する傾向があるからです。
商品の説明も詳しく記載されています。
サンスター
https://www.sunstar-shop.jp/s/
多くの日用品を販売し、特にオーラルケア製品を主力としているサンスターは、最近では健康食品にも注力し、健康飲料などを手掛けています。
健康飲料の主力商品の「緑でサラナ」は、UGC(ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ)というマーケティング手法を活用して成果を上げています。
TwitterやInstagramにユーザーが投稿した画像を、投稿者の許諾を得た上で、EC上のLP(ランディング・ページ)に掲載しました。
商品モニターを新規に募集しての新規顧客獲得のための施策や、1度購入してもらったユーザーを対象とした定期購入を促すための施策に活用しているということです。
モニターとして初めて試飲するとき、定期購入など長期契約を結ぶときに、ユーザー側の心理的ハードルが高いと考え、UGCを活用し、実際のユーザー視点から、「こんな人たちがこんな風に飲んでいる」ということを示して心理的ハードルを下げようとしています。
ミウラタクヤ商店
知名度が高い企業だけでなく、規模は小さいながらも急成長を遂げているECが数多くあるのも特徴的です。
その一つの「ミウラタクヤ商店」を運営するモノリスは、バターコーヒーなどの健康商品の販売を手掛けています。
自社ECをShopifyに移行したことで、売り上げを急激に伸ばしました。
自社ECの構築やオンラインモールなどもこれまで活用していたとのことですが、更新作業など雑務に追われることが多く、ユーザーとのコミュニケーションの時間が奪われていくことへの危機感を感じていたということです。
ShopifyをはじめとするASPによるEC構築は急成長しています。
ノーコードで実装でき、ドラッグ&ドロップの直感的操作で画像を追加できるなど初心者でも専門知識を必要とすることなくECサイトを制作できる点が特徴です。そのためサイト更新などの作業時間を大幅に短縮でき、ショップ運営の顧客とのコミュニケーションに注力できるようになったということです。
売れているECに共通している5つの点
売れている健康食品のECに共通している点を紹介します。
健康食品ならではの点や、どのECにもあてはまる事柄などを織り交ぜて、詳しく解説します。
表3:インターネット通販を使う際に重視している点は?(複数回答)
EC利用時の重視する点は、先ほどの博報堂の「EC生活者調査」の結果から多い順に、
「送料・手数料がかからない」
「商品を検索しやすい」
「全体的に通常の価格が安い」
となっています。
さらに健康食品のEC利用率が高い50・60代女性が重視している点は、
「割引・クーポンが利用できる」
「会員特典やポイントサービスがある」
となっています。
送料・手数料がかからない
購入のハードルを下げるために有効な手段が、送料や手数料を無料とすることです。
実際に先ほどのアンケートでも多くの人が重視している点に挙げています。
健康食品は定期購入によるものが多いので、毎回の送料や手数料が発生してしまうと、どうしてもためらってしまうことが多いでしょう。
定期購入を契約したら送料は無料にするや、手数料がかからないような商品価格にするなどの工夫が必要です。
割引・クーポン、会員特典・ポイントサービス
健康食品の購入層が一番厚いのが、先ほどのアンケート結果から50代以上の女性ということが分かります。
その年齢層の方が重視している点が、割引サービスやクーポン、また会員特典やポイントサービスなど購入時にお得と感じられる点があるかです。
初回購入の大きなハードルを超えるために効果的な手法は、初回割引で価格を下げる、または購入する商品とは別に小サイズ・小容量の商品を付属するトライアル商品の販売などがあります。
商品を検索しやすい、見比べられる・検索しやすい
商品が検索しやすく、どこにあるかがすぐに分かるサイト設計になっていることが好まれます。
ECサイトのデザインをターゲットとしている性別や年齢に合わせて制作することも大切な要因です。
EC内の購入ページが分かりにくいものであると、ユーザーはすぐにページを閉じてしまい離脱する可能性があります。購入ページへの導線は誰が操作しても分かりやすく、スムーズに購入までできるよう制作する必要があるでしょう。
商品や金額、カートボタンなどが順番通りにあれば視覚的にも分かりやすく、スムーズな購入手続きが可能です。
また、商品を詳しく紹介した特集ページなどを設けて、そこから購入できるようなデザインも利用しやすくなります。
商品について理解がよくできる
健康食品のECサイトでは、製品の情報が顧客にとって分かりやすくまた詳細に掲載されていることは重要な要素です。
ユーザーは、安全性や期待できる効果が得られるかなど、さまざまな項目を調べてから購入を検討します。
他社製品と比較して、購入を決めるユーザーも少なくありません。
また、どのようなセットで販売されているか、購入数や購入時期を長くすれば割引が得られるかと言ったような情報も詳しく掲載されていれば、お得感が出て購入意欲の向上にもつながります。
薬機法などのルールも遵守し、きちんと記載すべき項目はのせましょう。
SNSの活用、コミュニケーション
近年急成長を遂げている健康食品ECの共通点が、SNSを有効活用した情報発信や顧客とのコミュニケーションです。
SNSなどの口コミで顧客を獲得し、定期購入につなげるタイプの健康食品です。
若い年齢の方へのアピールはもちろんのこと、年齢層が高めのユーザーに対してもSNSなどのコミュニケーションツールを活用する人が増えたことにより効果が高まっています。
また従来からあるメールでのマーケティングも重要なコミュニケーションツールです。
定期購入したユーザーに積極的に新商品の発売情報をお知らせしたり、お得なセール情報を届けることは有効です。
また定期的にメールマガジンを発行して、既存顧客への周知も効果的です。
この取り組みをアプリやSNSを活用しながらさらに幅広い年齢層により効果的に繋げられるかが今後の健康食品ECのトレンドとなるかもしれません。
まとめ
本記事では、健康食品のECサイトについて解説しました。
成功事例を挙げて、成功しているECの共通点を紹介しました。
健康食品のECは成長を続け、全体の売上に占めるECも高い水準にあります。
成功事例や成功企業の共通点を参考に、自社での健康食品のEC販売の展開にぜひ役立ててください。